クラシック音楽で悲しみを癒やしていたYoshikiさん。
そんな彼の音楽人生を大きく変える出会いが、アメリカのロックバンドKISSでした。
鍵盤に寄り添う祈りの時間から、ドラムを叩き全身で叫ぶ表現へ――その転機をたどります。
クラシックに没頭していた少年時代
YOSHIKIさんは1965年、千葉県館山市に生まれました。
実家は呉服店を営む穏やかな家庭で、音楽がいつも流れる環境でした。
父はジャズピアノを弾き、母は三味線を、叔母は琴を。
家族の誰かがいつも“音”を奏でている——そんな日常の中で育ちました。
4歳のとき、父から贈られたピアノ。
それが、彼の人生を変える最初の贈り物でした。
小さな手で鍵盤に触れるたび、YOSHIKI少年は音の世界に心を奪われていきます。
やがてベートーヴェンやショパンを聴き、クラシック音楽に深く惹かれるようになります。
「将来はクラシックのピアニストになる」
——幼いながらに、そんな夢を描いていたといいます。
けれど10歳の夏、最愛の父が自ら命を絶ち、彼の人生は大きく変わります。
ピアノに向かうことすらつらくなるほどの喪失感。
その深い悲しみの中で、彼の心は“もうひとつの音楽”を求め始めました。
KISSとの衝撃的な出会い
ある日、YOSHIKI少年はレコード店に立ち寄ります。
いつものようにクラシックのアルバムを探していた彼の目に飛び込んできたのは、
奇抜なメイクをした4人組の姿——それがロックバンドKISSのジャケットでした。
「ベートーヴェンを買うつもりだったのに、気づけばKISSの“Love Gun”を手に取っていた」
と、後に彼は笑って語っています。
その日、自宅に戻ってレコードに針を落とした瞬間、彼の世界は一変しました。
激しいドラム、うねるギター、そして観客の歓声。
それまで感じたことのない熱量に、心が震えたのです。
「これが、音楽のもうひとつの姿なんだ。」
その夜から、YOSHIKIの中で何かが動き始めました。
ロックがもたらした解放感
1977年、母親に頼み込んでKISSの武道館公演へ。
火柱が上がり、観客が叫び、メンバーがステージを駆け回る——
その光景を見た瞬間、YOSHIKIの心の中で長いあいだ閉じ込められていた“叫び”が解き放たれました。
「あ、叫んでいいんだ。
悲しみも怒りも、音にしていいんだ。」
クラシックが心を癒やす音楽だとすれば、
ロックは心を燃やす音楽。
YOSHIKIはその自由さに救われました。
父を失った悲しみを、怒りを、音で叩き出す。
母が贈ってくれたドラムは、まさに“生きるための楽器”になっていきました。
ロックは破壊であり、再生でもあったのです
X JAPANへつながる道
中学・高校時代、YOSHIKIは幼なじみのToshlさんと共にバンド活動を始めます。
最初は趣味の延長だったその活動が、次第に本気の挑戦へと変わっていきました。
クラシックの緻密な構成と、ロックの衝動的なエネルギー。
その両方を融合させた音楽を生み出したい——
YOSHIKIはそう強く願い、独自のスタイルを作り上げていきます。
1989年、**X（のちのX JAPAN）**としてメジャーデビュー。
瞬く間に日本の音楽シーンを席巻し、
「紅」「Forever Love」「ART OF LIFE」など、時代を超えて愛される名曲を生み出しました。
ピアノの旋律にロックの魂を宿す——
その発想の源は、幼い日に出会ったクラシックとKISSの二つの世界だったのです。
まとめ
YOSHIKIさんの人生は、音楽によって救われた人生です。
クラシックが彼に“美しさ”を教え、
KISSが彼に“自由”を与えました。
悲しみを閉じ込めるのではなく、音として解き放つ。
それが彼の生き方であり、創造の原点。
「ロックがなかったら、生きていなかったかもしれない。」
その言葉に込められた想いは、
今も彼の音楽の中で静かに、そして力強く鳴り響いています。
FAQ
Q1. Yoshikiさんがロックに目覚めたきっかけは？
A1. アメリカのロックバンドKISSの音楽とビジュアルに触れたことです。
Q2. KISSのどんな点に惹かれたのですか？
A2. メイクや衣装のインパクト、激しいサウンド、ステージでの爆発的なパフォーマンスです。
Q3. クラシックからロックに転向した理由は？
A3. 父の死で抱えた怒りやエネルギーを、より直接的に表現できる手段を求めたためです。
Q4. ピアノとドラム、それぞれにどんな意味がありますか？
A4. ピアノは涙を、ドラムは怒りを表すと本人が語っています。
Q5. KISSとの出会いはX JAPANにどう影響しましたか？
A5. クラシックとロックを融合させる独自のスタイルを築く原点となりました。
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